16年間だれもクリアした事のなかったゲーム『リング∞』解析の末、遂にベストエンドが発見される。

「誰もEDを見た事の無いホラーゲーム」

注意書:この記事はWS「リング∞」のネタバレを含んでいる。エアプレイであり伝聞を覚え書いたものである。

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肉欲 肉欲企画 (@b2949) 氏のツイートが発端となり一部で話題となった2000年発売のワンダースワンのソフト「リング∞(リングインフィニティ)」

当時バイオハザード7の体験版やP.T.が話題の最中「クリアができないホラーゲーム」というミステリアスさが人々の興味を引いた。

 

『何度やっても井戸を閉められて死ぬんですけど。』

00年発売の比較的マイナーなゲームという事で、インターネット上にもそう攻略情報など残されておらず、唯一攻略に触れたサイトには以下のように記されていた事が不気味さを助長させた。

 何度やっても井戸閉められて死ぬんですけど。どなたかヘルプ!

ゲーム攻略覚え書き

 「リング∞」は三つの章からなるノベルゲームだが、第三章でどうやっても死ぬ、とだけ書き残されてフローチャートが完成していないのである。

 

また恐怖映画学校管理人の樹海 (@kakipyi)氏もこう反応した。

問題の「第三章」で

「ヒロインに突き落とされる」

「ヒロインを突き落とす」

「ヒロインと二人一緒に井戸に突き落とされる」

無事生還するエンディングにたどり着かないのである。

 

16年の「真相」 

 タイトルに「遂に発見」などと書いたが、冒頭の肉欲企画氏のツイートにもあるように「解析がなされていない」状況だったに過ぎず、話題に上がったのが契機となってか2chの携帯ゲームレトロ板で「リング∞」のROM解析を行った人物が現れた。2016年10月の事であった。

 

【WS】リング∞(インフィニティ)【WSC】

内容は229あたりからである。

 

以下に注と改変を加えながら抜粋引用する。

●0BB7 テラーポイント?
全章共通
危険な香りから逃げる選択肢等で上昇する事が多い
基本的にはこれが高いと悲惨な結末へ進みやすい

●0BBB シナリオポイント1?
一章 未使用?

二章 ポチを優先した選択肢、真相に近づく選択肢などで「上昇」
ベストエンドルート時ポチのその後の判定に使われている
→9以下でポチ死亡、10(データ上では0A)以上でポチ失踪

三章 木谷を優先する選択肢で「減少」する

「テラーポイント」は値が上昇すると悲惨な結末を迎える。その他、

「シナリオポイント1」の値は「ヒロイン木谷を優先する選択肢」で減少する。

 

テラーポイントとシナリオポイントを操作すると
エンディング報告されてる3つには分岐するが、それ以外は見つからない

エンディングは三種類で間違いない。

 

TP(テラーポイント)が4以下の場合、見えるのは貞子なルートへ、更にSP(シナリオポイント)によって2つに分岐する 

→SP2以下 木谷と一緒に落ちる
→SP3以上 貞子を落として蓋→蓋されたのは木谷でした

TPが5以上の場合、後ろに見えるのは木谷なルートへ
→SPに関係なく木谷に突き落とされる

そのうち、テラーポイント、シナリオポイントが低い状態で迎えるエンディングは「ヒロイン木谷と二人一緒に井戸に落ちる。」

 

ワンダーゲート配布のメールを見ると
三章は「どこまでヒロインの為に行動できるかがカギ」とあるので、
「SP1を上げずにプレイする事が三章のカギ」という事になります
で、それが条件となるエンディングは一つ「木谷と一緒に井戸で死亡エンド」だけです
これが公式な三章ベストエンドという事で…じゃダメでしょうか?w

「ワンダーゲート」とは、NTTドコモの携帯電話とワンダースワンをモデムケーブルで接続し、ウェブにアクセスできた周辺機器だった。2003年にサービス終了。「リング∞」もワンダーゲートに対応しており、インターネットをで経由してヒントメールや追加シナリオをダウンロードできていた。ヒントメールはアンロック形式で、解析により全文を読む事ができたという。

オフィシャルのヒントには「ヒロインの為に行動できるかがカギ」とある。

 

以上の結果から、「リング∞」のベストエンドは既に発見されていたものである。と結論づけている。

そのベストエンドとは「ヒロインと井戸に落下する」エンディングである。

 

終わりを迎える事の無いゲーム

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「トゥルーエンド」と書いてしまうと語弊があるものと思う。リング∞では「ベストエンド」という表現が用いられている。

ところで、このゲームはエンディングのいずれかにたどり着いたのち、冒頭「第一章」に戻される。

その第一章に戻された際に、迎えた結末によって冒頭の噂話が変化する。

 

「ヒロインを突き落とした」のであれば「主人公は精神に異常をきたしているらしい」と、「ヒロインと一緒に井戸に落下した」エンディングであれば「男女が行方不明らしい」といった具合である。

迎えた結末は噂話として、また新しい物語が始まるのである。表題通り「∞」だ。最終的にタイトルに帰結するというのは巧妙だな、と思う他にない。

 

もっとも「三章では必ず井戸に落ちる」ものとして「原作(小説)のようにループするのが正解なのでは」という解釈も、ROM解析前より当然存在していた。

 

ただ、一章、二章と生存して第三章に繋がる事、マルチエンディングである事、また三章のエンディングのあまりの救いの無さが、プレイヤーに「本当にループして終わりでいいのだろうか」という猜疑心を呼び起こさせたし、また時が経つにつれゲームソフト自体の入手難度が上がり、やがて「ワンダーゲート」のサービス終了により作り出された「見る事のできないヒント」なども相まって、人づてに「誰もクリアした事が無いホラーゲーム」という怪談が形作られ、「トゥルーエンドを見た人間は全員死んだ」といった尾ヒレが付いて広まっていったのだろう。

 

ゲームのエンディングだけをにわかに追って書いていったのだが、知ってみて尚プレイしてみたくなる、不思議な魅力を感じた。最後にゲームのシナリオを評価する樹海 (@kakipyi)氏のツイートを引用する。